猫の毛をほぐした
二十歳の誕生日がきてすぐ、猫を飼い始めた。 近所の土手で保護されたその子は、譲渡会のメンバーから「出産経験があるけど、つい最近まで子猫だったから!まだ若いのよ!」とやけに熱く推されたのを覚えている。どこからどう見ても立派な成猫だったけれど、そんな営業トークをしなくても、どんな猫でもウチで良ければ来てもらって構わなかった。
あれから十余年。当時ほぼ子猫だったという彼女も、すっかりシニアになった。ふわふわだった毛も、最近は放っておくとすぐ束になってしまう。細い毛の小さな毛玉には、ブラシが役に立たない。ひとつずつ、指で地道にほぐした。
普段はおひさまの匂いがする猫だけど、今日は粗相をしてしまったようで、仕方なく、気合を入れて洗った。風邪をひかないようにと、夫がこれでもかと念入りにドライヤーをかける。その大きな音に怯えた猫は、私の膝に逃げ込み、丸い塊になった。
濡れて細くなった毛が、団子のように絡まっている。それを指先でそっと、乾かしながら引っ張ってほぐす。ほどける毛並みを見ていると、私の頭の中で、彼女と過ごした時間がゆっくり巻き戻された。
十数年ともに生きてきた彼女にとって、私はどんな存在だろうか?そんなことを考えながら、かわいい毛玉に指をかけた。そんな日だった。